聞き語り銘板

視線

 見える人Gさんの話。


 鏡台の前に座ってお化粧をしていると、ふと視線を感じた。
 左右を見回しても何もいない。鏡に目を戻して初めて、視線の主を見つけた。
 鏡の中の自分の胸の辺りに目がある。その目と視線が合った。

 そこにあったのは目だけである。しばらく見つめると、その目は消えた。
 彼女の幽霊に対するスタンスは基本ガン見である。
 (強力な守護霊を持つ彼女だけに許された技と考えてもらいたい。普通の人は霊のガン見は止めた方がよい。幽霊と見つめ合うと体温を奪われると言う。つまりは命を吸われる)

 その後は部屋の中で小さなオレンジ色の人魂が漂っていたことが二回ほどあったという。


「目の他にね、眉毛もついていた」とは彼女の言である。