古縁流始末記銘板

雪の峠を越えて

 空一面が白であった。
 無数の雪片が風に乗って舞い下りてくる。その風は鋭い刃のようであった。身を切るような寒さ。その言葉が文字通りに実感される。
 峠も同じく白一色に染められていた。まるで世界がそれ以外の色を拒絶しているかのように。木々の姿さえ、凍れる雪の中に閉じこめられている。すでにここは人が生きていける世界ではなかった。慣れた者でもこのような吹雪の日には決して山には入らない。死ぬからだ。
 疲労に足が滑る。深く積もった雪の中を一歩一歩踏み出すその動きが、容赦なく残り少ない体力を奪い取って行く。
 限界が近いことを、感じた。

 草野三郎。当年とって三十歳。仇討ちの旅の最中であった。
 仇の名は加藤兵庫之助。両親を惨殺した憎むべき敵であり、また同時に無二の親友でもあった。
 どうして、あんなことをした。加藤兵庫之助。三郎は心の中でつぶやいた。この五年の間、数え切れぬほど呟いてきた問いであった。



 三十俵二人扶持。
 武家の禄としては最低に近い。草野三郎はいわば武家社会の底辺に生きる武士であった。長兄と次兄は若い内に相次いで病死した。貧乏が直接の原因でもなかったが、金があればもっと生きられたのは間違いがなかった。
 武士たる者が、内職に走ってどうする。そう、父親は断じていた。そんな暇があるなら、ただひたすらに武技を磨け。それが持論であった。
 その武士の誇りが、病になっても薬一つ買えないという結果につながったのだ。貧乏な武士が誇りなど持ってどうする。三郎はそう思っていた。

 厳しい父であった。
 頑固な父であった。
 意固地な父であった。

 武家で出す刺身は一切れと三切れは忌避される。『人切れ身切れ』に繋がると縁起を担ぐためだ。だが草野家は違う。貧乏ゆえ刺身などは滅多に出ないものではあったが、刺身が出るときは三切れで出される。
 武士たるもの、人切れ身切れはむしろ誉の言葉、決して避けるべきものに非ず。むしろ好んで人を殺す心持ちにあれ。そう三郎の父は日ごろから教え諭していた。
 幼い頃から木刀を持たされ、激しい稽古をつけられた。暑い夏の日も、寒い冬の日も。そう、ちょうどこんな吹雪の日もだ。武士たる者、強くなれねば生きる価値はない。そう言われた。
 強くなったって、偉い武士になれるわけでもない。そう父親に口ごたえしたときには、血を吐くまで殴られた。
 やがて長じるにつれて、自分も父親の考えを継ぐようになった。
 武芸で身を立てようと、本気でそう思うようになったのだ。



 雪が積もってゆく。地面と言わず、三郎の肩の上と言わず。あらゆるものをその厚く白い帳の内に埋めてゆく。
 死にゆく状況の中で、心は自ら過去へと向かう。



 太平の続くこの世の中で、剣技で身が立てられるはずもない。
 禄というものは減らされることはあっても、増やされることはない。戦場というものがないこの平和な世の中では、武士が武勇を立てて出世する道は完全に閉ざされている。
 それは若い頃の自分でもわかってはいた。だがそれを認めるわけにはいかなかったのだ。どのような厳しい生活でも耐えていけるのは希望があるから。それが虚しい希望と認めた瞬間に、自分は真の死を迎えるのだ。
 絶望して生きるよりも、わずかな希望にすがりついているほうが、うんと良い。
 そんな打算が心の隅になかったと、果たして言い切れるのか?

 あの日、三郎は、ふらりと一人稽古に出ていた。誰もいない神社の境内の中で、自分の行く末について思い悩んでいたとき、怪鳥のような叫びを聞いた。
 最初は枯れ木が立っているのかと思った。
 老人だ。今にも折れそうな細い腕が、ばらばらになりかけている雑巾のような服から突き出している。だがその老人の腕には、不釣り合いなほどの大刀が握られていた。
 古縁流。老人の流派の名前だ。今まで聞いたこともない流派であった。
 いにしえのえにし、と読むのだ。そう老人は語った。
 人と人が戦うのは、一期一会などでは決してない。いかなる戦いも過去に縁がある。袖摺り遭うも他生の縁というのは、嘘ではない。ましてや殺し合いをするともなれば、ただの縁ではない。
 だからこそ、切り捨てるという言葉はない。切り合いとは、己の人生を相手の人生と交差させること。そして生き残った方が相手の人生を継ぐことなのだと思え。
 そう老人は語り、その技の一端を見せてくれた。
 気合一閃、駆け寄った大木へ刀を振るう。白刃の軌跡は、三郎の目には見えなかった。
 いきなり大木の片側が裂けた。大人の腕でも抱えることのできないほどの大きな幹がほぼ半ばまで切断されている。その傍らでは、老人が静かに刀を鞘に納めているところであった。
 ただ驚愕だけがあった。その細い腕の中に、どれだけの力が秘められているとも見えぬのに。こんなことが人間の力でできるはずがない。
 もし切りかかられた相手が人間であったならば、たとえ鎧を着ていたにしても、両断の憂き目をみていたであろう。
 三日に渡り頼みこんで、弟子としてもらった。



 冷気は体の芯を切る。あのときの師匠の斬撃のように。薄い布の着物一つでは、この寒さが防げるはずもなかった。まるで刀で切り付けられるかのように、肌が痛んだ。その痛みが無くなったとき、自分は死ぬのだと、三郎にはわかっていた。
 まだ間に合う内に山を下りることはできた。そうするつもりだったし、そのはずだった。だが自分はそれをしなかった。まるで何かに呼ばれるようにこの山の奥深くに来てしまった。



 加藤兵庫之助。兄弟子はそう名乗った。
 同じ領内の同じ石高の武士の出。その中でもごく潰しの次男坊三男坊の若者寄集いで、きっと顔を会わせていたに違いない。しかし三郎には覚えがなかった。この集団はみじめに武家社会の底辺で蠢く連中の傷の舐め合い。そう考えていたからだ。薬代もない家の家計の内で、なぜか酒を飲む金だけはあった。
 父親の晩酌。その酒をこっそり盗んで、集まって飲むのだ。
 その惨めさに吐き気がした。
 だからこそ、たまの寄合に顔は出しても、他の者の名も顔も覚えなかった。
 その中でも加藤兵庫之助だけは違った。大酒飲みが珠の傷であったが、この時代には珍しく武技に心を傾ける男であった。二人して師匠の下で死ぬほどの修練を積んだ。

 古縁流の剣術の奥義は豪快な剣技に非ず。左手の内に隠した手裏剣にあった。剣戟の間に手裏剣は縦横無尽に乱れ飛び、そうして生まれた隙に必殺の斬撃が切り込む。如何な剣の流派も、この動きには対抗できるものではない。三郎はそう見てとった。
 手裏剣の技は蟹目撃ちを基本とする。手裏剣で蟹の目を射抜くほどの精度が必要とされるためだ。
 だが、古縁流の要求はさらに厳しいものであった。蟹の目を射抜くは当たり前、それに加えて一切の構えなしで複数の手裏剣を投げることが要求された。激しい剣戟の合間に手の内に隠した手裏剣や礫を、正確に相手の目に飛ばすのだ。手のひらの内にて投げる技、手のひらの外にて投げる技、そのどちらもが要求された。二本の手裏剣を同時にそれぞれ異なる速さで投げることも行った。
 それができて初めて、古縁流の最初の一歩に入ることができた。
 続いて斬撃の訓練に入った。右の片手持ちから素早く両手に切り替えて、渾身の斬撃を放つ。相手が手裏剣を避ければ斬撃を受けきれず、斬撃を受ければ手裏剣は避けきれぬ。そのために必要となる右腕の膂力はそら恐ろしいものであった。大きな石の重りを片手で持ち上げる訓練から始まり、それを軽々と振れるようになるまでは、地獄の日々だった。そのために薬活の基礎を叩き込まれた。山野に自生するただの草から多くの薬を作り服用した。
 山中のウサギを手裏剣で狩りつくし、腹に納めた。野犬もイノシシも刀で切り殺し、腹に納めた。賢いクマだけは、追うこともできない速さで山から逃げ出してしまったので、食うことはできなかった。
 古縁流。そは必殺にしても、決して表には出せぬ剣であった。
 戦国の世であれば、あるいは立身出世もあったやもしれぬ。だが太平の世ではそうもいかぬ。相手に飛び道具は卑怯なりと言われてしまえば、今の武士の間ではただあざ笑われるばかり。この剣術を極めたとしても立身出世は決してあるまいと断言できるものであった。
 だが一たびその強さを目にすれば、剣の道を究めたいと思う者ならば無視はできぬ。
 見栄えのよい風格のある剣技は確かに出世には有利であろう。ただし一度でも古縁流と剣を交えれば間違いなく負ける。
 三郎はそれを腑抜けの道と呼んだ。剣術は立身出世の道具ではなく、武士の生きる目的そのものでなくてはならぬ。そう信じていたのだ。
 加藤兵庫之助もまた同じであった。いわばこの二人だけが古縁流の真の理解者であった。
 修業の合間に多くを語り合った。太平の世にあって、剣技を磨くことの意味も、先行きの無い貧乏武士の未来についても。二人は深い深い絶望の中にあった。だがそれでも未来には希望があった。そう思うしかなかった。
 三郎は加藤兵庫之助を、顔も知らぬうちに死んだ兄たちに代わって、自分に新たにできた兄弟なのだと感じた。
 厳しい修行も加藤と行えば、実に楽しい遊びのように思えた。二人の伸びゆく剣の技量がうれしかった。お互いに組打ち散る刀の火花が頼もしかった。

 時は飛び去る矢のように流れ、やがて三郎は免許皆伝を受けた。
 兄弟子の兵庫之助よりも早く。それが破綻の始まりだった。

 病を得た師匠を見舞った帰り、三郎が家に帰ると、むっと鉄の異臭が鼻をついた。
 血。それも大量の血だ。そう直感した。
 居間へと駆け入る。襖を剥がすようにして引き開けて、あっと叫んだ。部屋中を満たす惨劇の光景。無残にも傷口を見せて、畳に伏せたままの両親の死体の周囲を、変色した血の海が覆う。
 たえ。
 思わず声が出た。妻の名を呼び、廊下を走る。いない。そう認識するとともに、安心と戦慄が同時に襲って来た。
 放心状態のままで、両親の死体が転がる部屋へと戻る。
 犯人は明らかであった。あれほど長い間、共に修行したのだから。
 古縁流、斬撃の太刀。これほどまで鮮やかに人の体を切り裂ける剣技は他にない。そしてそれをいま使えるのは自分の他にはただ一人。
 伸ばした視線が、床の間に向かう。
 無い。いつもそこにかけておいた家宝の太刀が無い。
 妻の妙が出先から帰ってきたのは、ちょうどそのときであった。



 力なく膝は頽れた。
 白い雪の地面がせり上がり、顎を打つ。自分が埋もれた雪の冷たさももう感じない。
 俺は死ぬのか。そう思った。
 雪が体の上に降り積もる。雪が重いと感じたのは初めてであった。
 たえ・・故郷に置いて来た妻の顔が目に浮かんだ。



 草野家に伝わるたった一つの家宝。戦国剛刀板打家盛。無骨な大太刀であった。普通の日本刀よりも長く、厚く、重い。戦国の世より草野家に代々伝わってきた名刀であった。多くの人の血を吸って来たことは剣術の修行を積んだ者なら見たただけで分かる。
 そして、これがあるが故に、父は武士というものに諦めがつかなかった。これがあるが故に、息子たる三郎に厳しくせざるを得なかった。
 それがいま、加藤に盗まれてしまった。
 だがそれだけが目的とは三郎には思えなかった。加藤はそこまで名刀というものに入れ込む人間ではない。
 惨劇の光景に腰を抜かし、三郎の腕の中に倒れ込んだ妻の妙の顔を見る。
 もしや、とも思った。
 妻の妙。おとなしく物静かな女性。ある日、病気で高熱を出し、それは長く続いた。薬代もない日々。しかし両親は刀を売るのを拒んだ。
 恐らくはそのために、石女となってしまった妻。
 だがそれでも三郎は妙が好きだった。貧乏武士の生活も、希望の欠片のない未来も、妙がいれば耐えられた。
 加藤兵庫之助に取ってはどうだったろうか。同じ底辺武士なれど、三郎には家族があり、武士の誇りたる刀があり、そして師匠に認められた剣の腕もある。
 お互い何も持たぬ者同士なのに、三郎には自分にないものがたくさんある。それを考えて、加藤はすべてを壊したくなったのではないか。

 仇討ちの願いは驚くほどすんなりと藩に認められた。底辺の中の底辺の家が今さら仇討ちも何もないというのが藩の偽らざる気持ちであった。家禄はその間は差し止められ、妻の妙は遠い親戚に預けられることとなった。
 出立の日、師匠の住まうあばら家を訪れた三郎に師匠はすまぬと言った。
「三郎。すべては儂の間違いじゃ。まずは兄弟子たるあやつに免許皆伝を渡すべきであった。あやつの剣にはまだ少し足りぬところがあると判断した儂はあまりにも厳正でありすぎた」
 そこで少しばかり嫌な咳をしてから師匠は後を続けた。
「兵庫之助は儂にそなたとの真剣試合を所望しておった。もちろん古縁流では同門での果し合いは禁じておる。我が流派は必殺の流派。同門同士が争えば、どちらか一方は必ず死ぬ。死なぬまでも剣士としての道は断たれるほどの怪我を負う。それでも兵庫之助はそなたとの決着をつけたがっていた。どちらが強いか、剣士としての業じゃ」
「お師匠さま」
「そなたの家の家宝たる戦国刀を盗んだのもそのためじゃ。追ってきて戦いの決着をつけろとの誘いなのじゃ」
「お師匠さま。私はどうすれば」
「かくなる上は、加藤めを追ってそなたらの古き縁を果たすしかあるまい。同門禁手の縛りは儂が許す。そうして加藤との決着をつけねば、次はお前の妻が狙われよう」
 三郎にとっては衝撃であった。兵庫之助はそこまでやるのかと思った。
「見事に加藤めを打ち取った後はお前の好きにすればよい。儂は昔より続く古縁流を絶やしたくなくてお前たちに教えてしまったが、もはや太平の世には無用の剣術。要は儂の悪あがきだったのじゃ。次に繋ぐかどうかはお前が決めなさい。ここで我が流派が絶えようが儂はもう何も言わん」
「お師匠さま」
「そなたにまみえるのはこれが最後。もうすぐに儂は死ぬ。後始末は近在の百姓に頼んである。墓すらも作られることはない。戦国より続いてきた我が剣の業もここで尽きる。後はお主らの因縁のみ」
 それきり師匠は目を瞑り、黙して語らずとなった。
 一つ頭を下げたきり、三郎はあばら家を後にした。

 逐電した加藤を追って、泣いてすがる妻を振り切っての仇討ちの旅が始まった。今までただの一度も口ごたえしなかった妻が初めてみせた激しさで、泣いて三郎にすがる。自分が石女だから捨てるのだとまで言った。その妻を、敢えて心を鬼にして振り払った。
 すべてを捨てての五年の旅は、侍としてのあらゆる虚飾を剥ぎ取られるには十分であった。今の世に侍などは要らぬのだと思い知らされる旅でもあった。
 この五年、どうして仇討ちを止めなかったのか。すでに藩は三郎のことなど忘れ、草野家の家禄も預かりのまま放置されている。たかだか三十俵二人扶持の家など、藩に取っては枝葉の先でしかない。今仇討ちを止めて町人になろうが誰が気にするものか。むしろ妙の手紙では藩よりお構いなしの文言がそれとなく伝えられたというではないか。
 だがそれでも三郎は仇を探すのを止めなかった。その理由は自分でも分からなかった。だがもう一度、加藤兵庫之助に会わねばならぬとの思いが捨てられなかったのだ。
 道々、大勢の人間が殺されていた。どれも犯人はしかとは分からなかったが、死体の切り口を見た三郎にはすぐに分かった。古縁流の斬撃。それ以外ではあり得なかった。それらの惨劇はまるで三郎を誘うかのように、あるいは揶揄うかのように点々と繋がっていた。
 最後に加藤兵庫之助が目撃されたのは山深いところにある小さな旅籠だった。そこを最後に兵庫之助の足取りはふっつりと消えていた。
 安旅籠の亭主は何も知らぬまま三郎に戦国剛刀板打家盛を見せた。
「これがそのお侍様が残していった刀でさあ。も少し経って戻って来なかったら、売って宿賃の足しにしようかと思いましてな」
 そこまで喋ってから、ぷうっとタバコの煙を吐く。
「お侍さま。これはいかほどの価値がありましょうかの?」
 その場で亭主を殺すのは思いとどまって、立ち上がりながら三郎はさも興味がなさそうに答えた。
「千金の価値ある宝だと思う」
 その夜、旅籠の亭主により大事に仕舞われていたその刀を三郎は盗みだした。

 加藤は恐らく山越えをしたのだ。そう三郎は考えた。関所を通らず山を越えようとする者は多い。山岳修験者などの山の民も山を突っ切って移動する。その人々の間に平地の民が溶け込むのは難しいが、それでも全くできぬというわけでもない。
 何かに呼ばれるかのように、山の奥へ奥へと分け入った。
 途中の村々で食を請い、先へ進んだ。村の人々は三郎がどこへ行こうとしているのかを知り、止めた。
「お武家さま。この先に行っちゃなんね。ここの山には魔物が出るでな」
「魔物?」
「人食いの化け物でさあ。白い大きな何かという話で、山に入った者が何人もやられていますだ」
 そう忠告してくれるのは一人二人でもなく、また一つ二つの村の話でもなかった。三郎が訪れた村々のほとんどがその化け物の被害を受けていた。大勢の人間が山に踏み込んでそのまま帰ってこない。藩より捕り手がやって来て山狩りをしたが、その誰もがいずれも帰ってこない。今では誰もが怖がって山には近寄らない仕儀となっていた。
「わかった。では俺がそいつを退治してやろう」
 もう加藤には会えないのだと予感して以来、何もかも捨て鉢になっていた三郎は請け負った。もとよりこの旅は仇討ちが目的であり、化け物退治なんかやる余裕はそもないはずなのだが、それでも三郎は山深くへ入ることにした。
 そんな三郎を止めることもできぬとみると、村人は食い物を分けて三郎を送り出してくれた。あわよくば自分たちの悩みの種を片付けてくれるやもしれぬ。うまくいかなくても化け物の腹を一人分膨らませることができて、村人の犠牲が一人でも減るのではないか。そんな下心も透けて見えた。
 戦国剛刀板打家盛を背中に括り付けたまま、三郎は山へと足を踏み入れた。
 それが一週間前のこととなる。
 その直後から山は吹雪に閉ざされた。



「自ら食われに来るとは奇特な者もいたものよの」
 雪に埋もれ、薄れゆく意識の中で三郎は声を聴いた。
 懐かしい声。
 忘れようとしても忘れられぬ声。
 加藤兵庫之助の声。
 消えかけていた命の火が一瞬で怒りの炎へと変じて、三郎は飛び起きた。
 周囲一帯は白一色。その景色の中に血走った目を走らせる。とそのとき、白い雪に埋もれた林の中から、さらに白が分かたれて生まれた。白くて大きな何か。
 次の瞬間、巨大な白虎が三郎の目の前にいた。
 その肩の高さだけで三郎の頭と同じだけはある。日の本の国には虎はおらぬ。だが以前に絵巻物で見た虎にそっくりであった。
 実物の虎を見たことがない三郎にも、それが普通の虎ではあり得ないことがわかった。これはもはや動物ではない、むしろ化け物の類だ。
 大白虎は三郎と向かい合うと、動きを止めた。その口から声が漏れる。加藤の声色で。
「なんと草野三郎ではないか!」
「その声は加藤。だがその姿は一体?」
 問いかけながらも、背負った戦国剛刀板打家盛を下し、偶然に見せかけてその縛り紐を解く。
「ならば、聞け!」
 大白虎は吠えた。
「草野。お前はこの五年の間どのようにして凌いできた?
 俺は旅人を斬り、その懐を漁って生きてきた。お偉い武士も斬った。町人も斬った。俺を捕えに来た役人も斬った。
 その数、百人に達した満月の夜、酒を飲んでいた俺は一匹の虎へと変じた。虎と変じた俺の前に冥界の者が現れて、こう告げたのだ。
 汝、その性、血を好むにして心の内に弑逆の思いあり。妬みに魂を任せ、暴虐に心奪われる。百人の無辜の民を殺した罪により、これより虎となりて冥界の示す罪人たちを百人殺して食う定めを科す、と」
「なんと驚くべき話よ。だが、中国の古き本にて似たような話を読んだことがある」
「だが百人の人間を殺して俺は人を斬ることに飽きたのだ。そのようなことをして何になると。俺の望みは強き者と戦うこと。ただ人を殺すことではない。
 ところが冥界の者どもはそんな俺を許さなかった。虎となりて、百人を食え。いずれも罪人ながら百人をその牙にかけるのがお前の本来の役目なのだと。百人の人間を殺したとき、俺はこの虎の姿より開放される。
 こう言われたときの俺の気持ちがわかるか。草野三郎よ」
「なんとも悲しいことだ。なんとも恥ずかしいことだ。なんとも苦しいことだ」
 三郎は左手を袖の中の手裏剣に這わせる。狙うは虎の両目、まずそれを潰し、必殺の斬撃で首を落とす。だが、この冷え切って痺れた手でそこまでの精緻な技が使えるだろうか。また加藤も古縁流の戦い方は熟知している。そうやすやすと手裏剣を打たせはすまい。
 あの大木のような太い腕を見ろ。あの手の先の鋭い爪は何だ。前足の一振りで、人間の首など簡単にもぎ取ってしまうだろう。
 この怪物よりも速く俺は動くことができるのか?
 できなければ死ぬだけだ。
 三郎の動きを知ってや知らずや、大白虎は微動だにしなかった。
「だがな。加藤」三郎は水を向けた。左手を握り込み血を流す時を稼ぐのだ。
「なんだ?」
「それはお前にふさわしい姿であろうぞ」
「なに!」
「ふさわしい姿であろうと言ったのだ」
 三郎は背を伸ばした。もはや寒さは気にならぬ。体の芯が怒りで燃える。
「俺を誘い出すために何の罪もない俺の父母を殺す。生きるための金を手に入れるために通りすがりの人々を殺す。虎として手あたり次第に村人を殺す。そのような者が人の姿をとっていることこそが間違いなのだ。人として恥ずかしいとは思わぬのか」
「ほざけ。恥など当の昔に捨てた。なればこそ俺は虎。すでに人ではない」
「今までに何人食った?」
「九十九人。そしてお前で百人目だ」
 大白虎は笑った。悪夢のように大きく、醜悪な顎の中には、無数の尖った歯が並んでいる。その中から、むうっと生臭い臭いが流れて来る。三郎はそこからいままでに食われた者たちの悲鳴が聞こえたような気がした。
「俺が百人目か。だとすれば俺も罪人ということになるな」
「罪人であろうが。天下泰平の世の中で人斬りの技を磨くものが罪人でなくて何だというのか」
「そう言われては返す言葉もない」
 うん、何とか手裏剣は投げられそうだ。
「この日を心の底から待っていたぞ! 草野三郎。我が愛しき、そして心の底より憎き友よ。さあ、おれと戦え! お前の技を見せてみよ! おれの魂をこの体から追い出してくれ。友よ」
 大白虎は吠えた。激しい咆哮。地面がびりびりと震えた。
「友と呼ぶのか! これほどのことを、おれにして、なおも」
 草野三郎は叫んだ。ずるりと大太刀の刀身が鞘から引き出される。
「業だ!」
 化け物が吠える。ゆっくりと迫って来るだけなのに、地面が揺れる。圧倒的な重量が感じられる。
「業だ。業だ。業だ。おれはお前と戦いたかった。本気のお前と剣を交えたかった。太平の世に剣術などという無益な行為を究めようとする、おれとお前の二人。戦わないわけにはいかないだろう。
 いにしえ。
 えにし。
 おれたちはお互いに、強い敵と戦うために産まれて来たのだ。そして今の世では俺とお前の二人しか真の武士はおらぬ。俺とお前で殺し合うしか手はないのだ。
 戦え、草野三郎よ。おれがお前を食うか、お前がおれを殺すかだ。
 父母を殺されただけではまだ戦う理由にはならぬか。それならば、お前を食って俺は人の姿に戻り、お前の妻のお妙の下を訪れることにしよう。
 そしてお妙を犯した後に下腹から食ってやろう」
 一瞬、三郎の周りの雪がはじけ飛んだようにも見えた。背後の吹雪の音さえ途絶えた。
 三郎は静かに名乗りを上げた。
「いにしえのえにし流。免許皆伝草野三郎参る」
 大白虎も名乗りを上げた。
「人にして虎。九十九人を食いし加藤兵庫之助参る」
 大白虎の巨大な顎が開き、死の罠を明らかにする。
 それに応えて雄叫びが、三郎の体の奥から湧き出てきた。
 刀を構えると裂帛の気合を上げて、三郎は突進した。

 初手は試しだ。大白虎の目へ向けて飛鳥の如くに手裏剣が飛ぶ。
 素早く大白虎が首を振り狙いを逸らせる。手裏剣は大白虎の額に当たり、深く傷つけることなく弾き飛ばされる。
「その手は食わぬぞ、三郎」大白虎はそう宣言すると、三郎に飛び掛かった。横跳びにそれを交わして、三郎は右手の大太刀を振るった。大白虎の丸太を思わせる腕に阻まれてそれも弾かれる。
 なんという剛毛。三郎はつぶやいた。なまなかな斬撃ではかすり傷を負わせるのがせいぜい。だが大白虎の動きは素早い。どれだけ渾身の斬撃を振るったとしても、躱されれば無意味。
 手裏剣が一の攻撃、斬撃が二の攻撃。その両方の攻撃が敵に当たる瞬間に一つになる。その二つの攻撃は受け手の持つ一の防御では抑えきれぬ。手裏剣を躱せば斬撃が、斬撃を躱せば手裏剣が当たる。その理屈で古縁流は必殺の剣技となる。
 だが、そのどちらの攻撃もこの大白虎には通用しない。あまりにも大きく丈夫な体ゆえに、多少の攻撃はそのまま受け止めて何の支障にもならないのだ。
「ようやくお前と本気で殺し合える。オレは嬉しいぞ。三郎。この時のために、オレは生きてきた」
「迷惑な話だ」三郎は答えた。だがその実、三郎も心の中では喜びを感じていた。厳しい修行のすべては今この時のためにあったのだと感じていた。
 ゆっくりと大白虎が距離を詰める。それを避けて三郎は林の中に飛び込んだ。前方に体が隠れるぐらいの木を見つけ、その背後に回る。大白虎の巨体が立てる足音が迫ってくる。
 予感に従い、三郎は前へ跳んだ。大白虎の腕が振り回され、たった今まで三郎が隠れていた木が丸ごとへし折られる。あのまま木の後ろに隠れていたら、今頃はただの肉の塊となっていただろう。化け物のみが成しえる膂力。三郎は舌を巻いた。
「すばしこいな。三郎」大白虎は言った。「オレの方が力もあるし、体も大きい。その代わりお前には手裏剣があるし、太刀もある。オレの勝ち目は七分三分というところか。いや、やはりオレの方が圧倒的だな。この体にされたとき冥界の者どもをずいぶんと恨んだものだが、今は感謝しかない」
 それには答えず、三郎はまた木の後ろに隠れた。先ほどよりは大きな木だ。むろんこの木とて大白虎の力の前には盾の代わりになるわけもないが、三郎には考えがあった。
 大白虎が来る。今度は足音を忍ばせて。だがいかに忍びやかに歩こうが雪を踏む足音だけは消せるものではない。
 迸る殺気と共にまたもや木が砕けた。一瞬早く前に飛んだ三郎の手から、手裏剣が飛ぶ。あらゆる生き物は攻撃が終わった瞬間に一瞬だけ無防備となる。それは大白虎とて同じ。これを避けられるわけがなかった。正確に飛んだ二本の手裏剣は顔を覆った大白虎のもう一方の前足に刺さって終わった。
「いい動きだ。だが古縁流についてはよく知っておるぞ。手裏剣がこのオレに通用なぞするものか」
「毒を塗っておいた」べろりと三郎は嘘をついた。
 それを聞いて一瞬大白虎の動きが止まった。
「だとしてもオレが動けなくなるまでには長くかかるぞ。さて、それまでお前の命が持つかどうか。さあ、自慢の斬撃はどうした。オレを殺せるとしたらその大太刀の一撃しかないぞ」
 確かにその通りだ。三郎は再び林の中の空き地に飛び出した。ここでなら刀を振るえる。
 大白虎の体は大きい。大人の牛の三倍以上はある化け物だ。いかに古縁流の斬撃と言えど無理なことはある。狙いは首を切り落とすことだけだが、それが簡単にできないことは判っていた。まずその前段階として、どうしても大白虎の両目を潰す必要がある。
 ならば。三郎は覚悟を決めた。今こそ古縁流免許皆伝の秘奥義を使うとき。
 三郎は大太刀を上段に振りかぶって叫んだ。
「来い! 加藤兵庫之助。決着をつけようぞ」
「応!」大白虎が吠えた。
 大白虎が林の中から雪煙と共に飛び出して来る。気合と共に三郎が大太刀を振り下ろす。
 渾身の斬撃。
 刃は大白虎が振り上げた前足を半ばまで切り込んだ。だがそこまでだった。大木を両断する斬撃も、大白虎の腕を切り落とすことはできなかった。大白虎が恐ろしい膂力でもう一方の前足を振ると、三郎の体が宙に舞った。真っ二つに折られた大太刀がそれを追う。
 激しく地面に叩きつけられて三郎の意識が飛びかけた。それでも左手は懐に入り、手裏剣を抜き出した。
 だが大白虎の顎がそこにあった。大きな顎が閉まり、手裏剣を握ったままの三郎の左手を噛み切った。
「!」悲鳴は声にはならなかった。
 大白虎は己の血まみれの前足を倒れた三郎の胸の上に押し付けている。そのあまりの重量に、三郎はまったく動けなくなった。
 くちゃくちゃと大白虎が口を動かした。
「ぬしの肉は旨いな。腸を食うときが待ち遠しいぞ」
 にい、と大白虎が笑った。虎のものではない、人が作る笑みだ。
「これで終わりだ。三郎」白大虎が言い放った。「いにしえのえにしはこれにて果たされる」
「そうだな」
 苦しい息の下で三郎は答えた。そこで体に力をこめ、大きく息を吸い込むと、口をすぼめた。
 氷の寒さの中に噴出する吐息。それは真っ白な軌跡を残して、眼前の白大虎の顔に吹き付けられる。銀色の輝く何かが無数に散り、直後、大白虎の咆哮が上がった。虎らしくもなく二本足で立ち上がり、己の顔を搔きむしる。
 その隙をついて三郎は大白虎の下から這い出した。大白虎の両目に突き刺さったのは無数の針であった。三郎は口の中から小さな竹筒を吐き出した。
「古縁流免許皆伝秘奥義、霞針」
 技の名を告げた。口の中に含んだ細竹の中に無数の針を仕込み、目の前の相手の目に吹きかける。針には弱い毒が塗ってあり、相手を確実に失明させる。口の中に細竹を咥えたまま、それを相手に悟らせないように喋る技を習得するのにいったい何年かかったことか。
 古縁流には鍔迫り合いは死の技となる。それがこの秘奥義の恐ろしさ。仕掛けは単純だが、これを避けられる者はいない。
「卑怯な!」大白虎が叫んだ。
「忘れたか。加藤。それこそが古縁流には誉め言葉」三郎は答えた。
 盲目となった大白虎が暴れまわる。無茶苦茶に振るう両腕の衝撃で周囲の木がことどとくへし折れ、岩が砕ける。三郎は離れてそれを見守っていた。首に巻いていた手ぬぐいを外すと、食いちぎられた左手を手早く止血する。大白虎の隙を作るためとは言え、古縁流にとっては命よりも大事な左手を犠牲としたのだ。三郎の心中は複雑であった。
 暴れに暴れて疲れ切った大白虎が立ち止まると、三郎が歩み寄る音がした。大白虎はうかと音のした方へ耳を向けた。手裏剣が飛び、その耳を貫く。慌てて顔を反対側に振り向けたのはさらに悪手であった。曝されたもう一方の耳にも手裏剣が刺さる。耳の中に血が満ちれば、もう何も聞こえない。
「お主の負けだ。加藤」
 それが聞こえているとも思えぬが、大白虎の動きが止まった。
「目も耳もつぶされては、オレの負けか。さあ、三郎。オレの首を落とすがよい」
「承知」
 三郎は大白虎に近づいた。
 大白虎は待っていた。自分の死は確定しているが、勝負の行方はまだわからない。虎が足で周囲を知ることができることを人である三郎は知るまい。大白虎は心の中でほくそ笑んだ。
 大白虎はその瞬間を待った。来い。もっと近づいて来い。三郎。
 今だ。大白虎は残った力をすべて込めた必殺の前足を見舞った。鋭く太い爪が空気を切り裂く。一瞬早く空中に飛んだ三郎が、手にした折れた大太刀を大白虎の首に振り下ろす。
 凄まじい斬撃だった。
 短くなった刃は大白虎の首を手前半分だけ切断して地面を打った。大白虎の切断された頸動脈から熱い血がどうどうと流れ出す。次の動きを警戒して三郎は後ろに飛んだが、白大虎の動きはそれきり止まった。湯気を上げる熱い血が周囲の雪を融かしていく。
「やはり負けか」大白虎が途切れ途切れに言った。
「これを勝ったと言ってよいものか」三郎は己の左腕を見ながら言った。食いちぎられた後が無残だ。すでに血は止まっている。寒さのせいか、それほど痛みも感じない。
 古縁流。同門同士が戦えば、いずれもタダでは済まない。師匠の言葉が今さらながらに頭をよぎった。
「さらばだ。三郎。また次の世があるとしたら、再び相まみえて戦おうぞ」
 それっきり、大白虎・加藤兵庫之助は押し黙った。しばらく様子を伺った後、三郎は大白虎の反対側に回り、再び折れた大太刀を振るった。今度こそ大白虎の首が完全に切断されて地に落ちた。





 しつこく残っていた根雪もようやくのこと溶けて消えた。どこから訪れたのか、鶯が鳴いている。
 縁側でうたた寝をしていた白髪交じりの男が大きく伸びをした。左の手首から先がない。
「よくお眠りになりましたか。お茶が入りましたよ」
 これも老いた女性がお茶を載せた盆を持って部屋に入って来る。
「ああ、すまんな。お妙」
 老いた三郎は茶碗を取ると、啜り始めた。
「何やら魘されていたようですが」
「昔の夢をな。ちょっと」
 そろそろと暮れ行く陽を眺めた。
 古の縁か。俺と兵庫之助はいったいどのような縁であったのか。あそこまでして殺し合わねばならぬ何をしてきたのか。果たして俺とあいつの業は解けたのか。

 仇討ち成就の証として殿様に大白虎の首と毛皮を差し出したときの驚きようといったら。
 三郎はそれを思い出して微笑んだ。
 これが仇の加藤兵庫之助の首にてございますとの三郎の文言は苦笑を持って迎えられた。しかし大白虎の首は見る者の肝胆を寒からしめ、その信じられぬほどの大きな毛皮はさらなる驚嘆を生んだ。
 藩より調査の者があの山へと送られた。
 血まみれの三郎が山から下りてきて、ようやく動けるようになるまでに一か月かかったこと。三郎の案内で村人が恐る恐る山に登ってみてその惨状に驚愕したこと。
 林の中の木はことごとくへし折られ、周囲の大地は掘り返されている。折れた戦国刀が地面に突き刺さっている横に半ば凍り付いた大白虎の首が転がっていた。大岩だと思っていたものが雪が降り積もった大白虎の巨躯だと知ったときの驚き。すべてが明るみにさらされた。
 他国の村々に甚大な被害を出していた化け物を確かに三郎が退治したとあっては、藩としてももはや捨ておけない。三郎へのお構いなしの令状は取り消され、新しく加増された職が提示された。
 三郎は切り株と変じた左手を見せてそれを断った。これでは十分なご奉仕ができませぬゆえ、と。本音は武士というものに愛想が尽きていたからであった。
 ならばと大白虎の毛皮と引き換えに下しおかれた金子を元手にして商売を始めた。それは大いに当たり、三郎は今の立場に落ち着くことができた。五年に及ぶ仇討ちの旅の経験は決して無駄にはならなかった。
 もはや古縁流を継ぐ者はいない。だが、今の三郎には剣の道を究めたのだという自負が満たされていた。いったいどこの誰があれほどの化け物を一人で退治できよう。
「梅ももう終わるに、季節外れの鶯かな。この陽気ではそろそろ桜も咲こうというものなのに」
「あら、そうでもありませんわ。梅でも桜でも、鶯は絵になりますもの」
 妻の妙が応える。
「桜が咲いたら、梓屋でお花見弁当を作ってもらって河原にでも出ようかね。丁稚たちもお供させてやったら喜ぶだろう。あやつら、旨いものには目がないからな」
「そうですね。そうしましょう」
 お妙は幸せそうに目を細めた。