母が短歌人会の友人と出かけていたときの話である。 小高い丘まで車で出かけて、満月鑑賞と洒落こんだ。 これほどの満月、歌の一つもものにせねば勿体ない。「見てみて。綺麗なお月さま」 母が空を指さす。「バカ! 月はあっちだ」 友人が反対側を指さす。 空には見事な満月が二つ、ぽっかりと浮かんでいたそうな。 狸が己の技の修練を見せるために行う術の一つ、狸月と言うそうな。