馬鹿話短編集銘板

秘密組織

 ひょんなことから俺はその組織の秘密を知ってしまった。それと同時に俺のことも奴らにバレてしまった。
 もちろん逃げたよ。敵は世界に跨る巨大秘密組織だ。その構成員はどこにでも居る。勝てるわけがないからな。
 夜は奴らの世界だ。だが昼だからと言って安全ではない。
 だから常に変装して出歩いた。

 監視の目がきつくなってきたと感じたら居を移した。棒を投げランダムに行き先を決める。別に転居は苦にならない。長い間の諜報員生活が役に立った。幸い隠し口座に金はある。
 かっての仲間の何人かはすでに姿を消している。恐らくは彼らの仲間にされてしまったのだろう。追われる側が今は追う側に加わっている可能性もある。それを考えると苦しくて堪らない。
 外国に移住することも考えたが諦めた。どの国にも奴らの手先はいる。外人に混ざれば逆に目立ってすぐに見つかってしまう。

 買い物に出た際に他の買い物客と揉めて被っていたフードを引きはがされたのは俺のミスだ。そのときたまたま傍に奴らが居たのは俺の不運だ。
 気づかれていませんようにと祈りながら、隠れ家に戻り戦いの準備をした。
 銃に爆発物。だがこんなものが奴らに通用するのだろうか。

 言ったはずだな。夜は奴らの世界だって。
 日が落ちると奴らが襲ってきた。暗闇の中に無数に光る眼。そして鋭い白い牙。
 奴らは群れでやって来た。
 俺は頑張ったが、無駄だった。
 柔らかな肉球の衝撃を頬に受け、俺の意識は遠のいていった。
 薄れゆく意識の中で奴らが近づいて来るのを感じた。

 人類を影から操る巨大秘密組織。
 ヌコ・ニャンコ・ネットワーク。通称NNN。


 そういうわけで今の俺は猫をやっている。